Architect Labo

設計の徒然日記

見えない地盤とその予測

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現在、公共工事で他の設計事務所が設計したRC3階建ての監督業務で、監理している(現場監督ではありません・・・念のため)現場では支持地盤が設計条件と異なっているため、その対応に追われています。

 

設計前の段階で2カ所の標準貫入試験が行われていますが、既存建物が残っている状況で行われた様で、いずれも計画建物が建つ位置から外側にズレた位置で調査されています。平坦地なら大きな問題にはなり難いのでしょうが、当該物件は緩やかな丘陵地にあり、地層が狭い範囲であっても平坦では無い可能性があると言う大きな落とし穴に嵌ってしまったようです。

事前の2カ所の標準貫入試験では、おおよそ似たような調査結果を示しており、その結果から直接基礎で設計されていますが、設計図書にある現況図面や解体指示図面には、既存建物が木造平屋なのに「PC杭」が印されています、それも長さが2mと4mの位置があり、地盤が傾斜していることを伺わせます。更に解体着工前の現況調査では計測するまでもなく内装床の傾きが確認されており、地盤が緩いことはある程度想定されました。

しかし、現場は丘陵地の頂点付近に位置し、周囲を見渡すと緑が生い茂り地山を掘削した地形のようにも見えるため、まさか地盤でここまで大きな問題になるとは・・・と、工事着手前の段階では思いもよりませんでした。

 

そして既存の木造平屋の建物解体工事終盤、基礎下にある杭の引き抜きで付着してくる土が土質サンプルとは明らかに異なっていることから事態は大きな問題に発展しました。

現場から「杭に着いてくる土の色が土質サンプルと違っていて、とても緩い地層があるようです・・・」と連絡をもらい、基礎底まで掘削してもらうと濃灰色のシルト層が見えています。明らかに緩い地層で、設計図書では地耐力を確認するために平板載荷試験を行うこととなっていますが、試験をするまでもないほどの状況に困惑です。

 

念のため、現場監督さんにお願いして周辺を含めた古い地形図を用意してもらいました。地形図は明治頃のものと思われますが、現代の地図のように精度は高くなく、あくまでも目安程度にと考えますが、最新の地図を重ね合わせてみるとどう見ても地山の位置になります。

そんな状況で工事が滞っている最中に、近隣の方から「この辺は戦後は谷だったんだよ・・・」と教えてもらいました。地形図では地山に見えても、例え標準貫入試験の結果が良くても、僅か10mほど移動しただけで全く違う地層が出てしまい、一つの建物が強固な地山から軟弱地盤に横たわる配置になっています。

 

今更ながら、標準貫入試験では直接基礎が可能な地耐力を示していても、解体指示図面の既存建物は木造平屋なのに杭が打ってあるという違和感に対して、もっと早い段階で突っ込んだ調査が出来たのではないだろうかと思えてなりません。他者の設計だからといって全てを鵜呑みにせず、改めて一から検証する必要性を感じました。

仕事では往々にして僅かな違和感を放置したために後で大きな問題に発展することは経験していますが、今回は事後対応するしかありません。

自分で設計する時には特に注意しなくてはいけない目には見えない地盤の出来事でした。

Written by architecter

7月 15th, 2011 at 5:03 pm